光造形とは

 光造形とは、液状の光硬化性樹脂をレーザ等の光ビームで一層ずつ硬化させて、積層することにより成形用の型や切削工具等を用いずにプラスチックの3次元立体物を精度良く作成する技術である。

 図1に示すように、具体的には、まず、コンピュータ上の3次元CADと呼ばれる立体デザインシステムによって作りたい物品の3次元立体形状データを入力する。引き続き、コンピュータ上で前記形状データを所定の等間隔にスライスしてその断面のデータを作る。

 次いで、液状の光硬化性樹脂を充填したタンク内のテーブル上に形成した所定の厚みの液状樹脂薄層の表面を、前記断面データに基づいてレーザ光で走査(スキャン)する。するとレーザ光が照射された部分の樹脂が硬化して断面データに対応した第1層めの樹脂硬化層が形成される。

 その後、所定の厚み分だけテーブルを下げ、再度液状樹脂を所定厚みで供給し、第2層目の硬化の準備を行う。引き続き、同様に樹脂の表面をレーザ光でスキャンして第2層目の断面データに対応する樹脂硬化層を形成する。これを繰り返すことにより所望の形状のプラスチックの3次元立体物を製造する。

 樹脂硬化層の1層は極めて薄くすれば高精度の成形を行うことができ、比較的厚くすれば高速(短時間)で成形を行うことができる。

光造形の原理図(九工大 楢原教授HPより)

 この光造形法を切削工具を用いた従来の機械加工の立体物製作法と比較すると以下のような利点が挙げられる。

  • 通常の切削加工が困難な自由曲面や複雑な構造(アンダーカット部など)を有する立体形状を簡単に製作することができる。
  • 完全自動化されたプロセスであり、装置を操作するために特別な知識、熟練が不要である。
  • 短時間でかつ経済的に所望のモデル製作が可能である。
  • 工具磨耗、騒音、振動、切削屑の発生がない。 

 このため 

  • 工業分野では、デザインモデル、ワーキングモデル、マスタモデル、木型、樹脂型、ロストワックスマスタ、真空注型マスタ、少量生産部品、真空注型型、直接射出成形型、
  • 3次元コピーとしては、人体モデル、靴型、立体地図、
  • 医療分野としては、手術シュミレーションモデル、補装具、教育訓練用モデルなどが挙げられる。

 今後、3次元CADの普及と材料(光硬化性樹脂など)の開発が進むにつれてこれら用途は飛躍的に拡大するものと期待される。